「もっと遊んであげなきゃ」
仕事で疲れて帰った夜、しっぽを振って待つわんにょむを見て、いつもそう思っていました。
ある研究を読んで、その「もっと」が、量じゃなくて質の話だったと知った日の話を書きます。
仕事で疲れていても、罪悪感で15分遊んでいた
カフェで立ちっぱなしの仕事のあと、家に帰ってもまだ動き続けるわんにょむを見ると、罪悪感がじわっと湧いていました。
「私が疲れてるからって、この子を退屈にさせちゃダメ」 「ちゃんと遊んであげなきゃ」 「もっと体を動かさせてあげなきゃ」
そう思って、無理してでも15〜20分はおもちゃで遊ぶようにしていました。 ボール投げ、引っ張りっこ、追いかけっこ。
でも、正直、私は疲れていて、集中していなかった。 わんにょむも、なんとなく義務的な遊びに付き合ってくれている感じ。
ある日、ふと(これって本当に良い時間になってる?)と疑問が湧きました。
量を意識して時間を確保しているけど、その時間の中身は、はたしてわんにょむのためになっているのか。
「もっと長く」を、私はずっと信じていた
ネットで「犬の運動量」を調べると、犬種ごとに「1日何時間が理想」みたいな目安が出てきます。
トイプードルは1日30分〜1時間。 ラブラドルは1日2時間。 柴犬は1日1時間以上。
そういう数字を見ると、「うちの子に足りてるかな」と不安になる。 わんにょむは5歳のトイプー。 私は朝晩あわせて30〜40分くらいの散歩をしている。 でも、家での遊びは日によってバラバラ。
「量が足りてないかも」という不安が、私の中にはずっとあった。
そして、その不安が「もっと遊ばなきゃ」という罪悪感を作っていた。
ある夜、検索バーに「犬 遊び 環境エンリッチメント 効果 研究」と打ち込みました。
「質と種類が大事」と書かれた、ある研究
たどり着いたのは、2022年に出た「環境エンリッチメント(EE)が犬の行動に与える影響」のパイロット研究でした。
研究者たちは、こう書いていました。
家庭犬や飼育動物の生活の質は、追加の刺激や活動(環境エンリッチメント)を提供することで向上できる。 ただし、エンリッチメントが本当に動物にとって有益であることを確認する必要がある。 すべての追加刺激が、必ずしも良い結果をもたらすわけではない。
つまり、「遊びの量を増やせばいい」という単純な話じゃなかった。
研究では、犬に提供したエンリッチメントの種類を細かく分析していました。
- 嗅覚系(ノーズワーク、においの探索)
- 認知系(パズルフィーダー、新しい場所の探索)
- 社会系(他の犬や人との交流)
- 身体系(走る、跳ぶ、引っ張る)
これらの組み合わせと、その犬の個性に合わせた選択が、効果を決めていた。
例えば、嗅覚刺激が好きな犬に、無理に身体系の遊びを長時間やらせても、十分な満足感は得られない。 逆に、走り回るのが好きな犬に、嗅覚パズルだけを与えても、それは「足りない」エンリッチメント。
——「遊んだ時間の長さ」じゃなくて、「この子が満たされる種類の活動を提供したか」が、大事だった。
しかも、研究では「短時間でも適切なエンリッチメント」が、長時間の不適切な遊びより効果的、と示唆されていました。
私が罪悪感で15分続けていた義務的なボール遊びより、5分の嗅覚遊びの方が、わんにょむには満足度が高いかもしれない、ということ。
わんにょむが「本当に喜ぶ遊び」を、観察するようになった
研究を読んでから、私はわんにょむの遊び方を観察するようになりました。
ボール投げ:
- 最初の数回は走って取りに行く
- でも、5分後にはちょっと疲れた顔
- 10分後には、もう転がってこない
引っ張りっこ:
- 数分は楽しそう
- でも、強さの調整が難しくて、わんにょむのほうが先に飽きる
おやつ探しゲーム(家の中におやつを隠す):
- 鼻を使ってクンクン探す
- 嬉しそうに見つけて食べる
- 全部見つけた後、満足げにクッションで寝る
うちの子がいちばん満たされる遊びは、ボール遊びじゃなくて、おやつ探しだった。 時間にして10分くらい。 それで、わんにょむは満足してリラックスする。
これを発見してから、夜の遊びの時間が、ずいぶん楽になりました。
「長くやらなきゃ」という義務感が消えた。 代わりに、「この子が喜ぶ10分を、私もちゃんと楽しもう」という感覚に。
「もっと」の代わりに、「ちゃんと」を選びたい
カフェに来てくれる飼い主さんで、「うちの子に十分遊んであげられてない気がして」と話す方には、最近こうお伝えしています。
「遊びは量より質みたいですよ。その子が喜ぶ種類のエンリッチメントを、短時間でもしっかりやれば、十分なみたい」
驚かれることが多いです。 「えっそうなんですか、もっと長くやらなきゃと思ってました」と。
私もずっとそう思ってきたから、その表情がよくわかります。
そして、お伝えするのは「愛犬の遊びの好みを観察してください」ということ。 嗅覚系、認知系、身体系、社会系。 どれが一番その子を満たすか、それを知ることが、量より大事。
明日も、わんにょむが帰宅した私を待っていると思います。 私は疲れていても、わんにょむが好きな10分のおやつ探しなら、できる。
「もっと遊ばなきゃ」じゃなくて、「この子が喜ぶことを、ちゃんと10分」。 それが、たぶん飼い主と犬の両方にとって、いちばん持続可能な形だと、今は思っています。