「人間が超加工食品を食べ続けると、健康によくないらしいですよ」

カフェのお客さまから、そんなニュースの話を聞いた夜、ふと(うちの子の毎日のドライフードって、どっちなんだろう)と頭をよぎりました。

ある研究を読んで、その問いに対する意外な答えに出会った話を書きます。


「超加工食品(UPF)」の話を聞いてから、フードの袋が気になり始めた

最近、人間の食事の世界では「超加工食品(Ultra-Processed Food, UPF)」という言葉をよく聞きます。

スナック菓子、菓子パン、レトルト食品、ファストフード。 工場で複雑に加工されて、添加物がたくさん入っていて、長期保存できるように作られている食品。 それらを多く食べる人は、肥満、糖尿病、心臓病、がんなどのリスクが上がるという研究が増えている、と。

私はその話を聞きながら、ふと自分の食生活を反省しつつ、もうひとつ気づいてしまった。

うちのわんにょむが毎日食べているドライフード。 それは、UPFと同じカテゴリーに入るんじゃないか?

工場で加工されている。原型がない粒状。長期保存可能。添加物(防腐剤、酸化防止剤、栄養添加物)がいろいろ入っている。 これって、犬版のジャンクフードじゃないか。

そう思った瞬間、ちょっと罪悪感が湧きました。 私は毎日、わんにょむにジャンクフードを与え続けているのかもしれない。

その夜、検索バーに「ドッグフード 超加工 UPF 健康」と打ち込みました。


「人間のUPFと犬のフード、同じか?」の研究

たどり着いたのは、2026年に出た、まさに私の疑問に答えてくれる研究でした。

研究者たちは、人間のUPFの定義(NOVA分類)が、犬と猫のフードにどう当てはまるかを、丁寧に検証していました。

NOVA分類では、食品をこう分けています:

  • グループ1:未加工 or 最小加工(生肉、野菜)
  • グループ2:加工された調理原料(油、塩、砂糖)
  • グループ3:加工食品(パン、チーズ)
  • グループ4:超加工食品(UPF)(スナック菓子、菓子パン、レトルト)

ペットフードに当てはめると、ドライキブル(押し出し成形ドライフード)と缶詰のウェットフードは、人間のUPFの特徴と多くの点で重なるそうです。

ここまで読んで、「やっぱりジャンクフードか」と思いかけました。

でも、研究の結論は、もう少し慎重でした。

人間のUPF研究の知見を、犬と猫にそのまま外挿することはできない。 ペットフードの加工プロセスは、人間の食品とは目的・方法・規制が異なる。 ペットフードの加工レベルを客観的に分類する独自の枠組みが必要である。

つまり、「ドライフード=犬のジャンクフード」と単純に言えない、ということ。

人間のUPFは、嗜好性を高めるために砂糖や塩を大量に追加したり、エネルギー密度を意図的に上げたりしている。 ペットフードは、AAFCOやFEDIAFの基準に従って、犬の必要栄養素を厳密に満たすように設計されている。 目的も、加工の方向性も、違う。


「ドライフードが悪い」じゃなく、「中身を見る」が大事だった

研究で示されていたのは、「ペットフードの加工レベル」を独自に評価する基準作りの必要性でした。

要点を整理すると:

  • 加工レベルだけで「良い・悪い」を判断するのは早計
  • 同じドライフードでも、原料の質、加工の精度、栄養設計が大きく違う
  • 何が入っているか」「何を足しているか」「どう作られているか」を見るほうが、ラベルだけ見るより意味がある

つまり、「ドライ vs 生食」「キブル vs 手作り」みたいな単純な対立じゃなくて、それぞれのフードの中身を読み解く目が必要、ということ。

——「ドライフード=犬のジャンクフード」と決めつけて生食に切り替えるのは、たぶん早い。 別の記事でも書いたけど、生食には別のリスク(感染症、栄養不足)がある。

大事だったのは、「加工レベル」だけを物差しにせず、「この子の体に届く中身」を見る目を持つこと。


わんにょむのフードの裏側を、これまでより丁寧に読むようになった

その夜から、わんにょむのフードの袋の裏側を、これまでより丁寧に読むようになりました。

  • 原材料表(最初の3つに何があるか)
  • 栄養素の表(タンパク質、脂質、繊維、灰分)
  • 添加物(保存料、着色料、酸化防止剤)
  • 加工方法(押出成形、フリーズドライ、加熱処理)

「グレインフリー」「自然派」「無添加」みたいな表面的なラベルだけじゃなくて、その中身を構成している要素を見るようになった。

完璧に判断できているわけじゃありません。 でも、「ドライフード=悪」「生食=善」みたいな極端な思考からは、確実に離れられました。

毎日のフードに対する罪悪感も、ちょっと減りました。 「ジャンクフードを与えてる」じゃなくて、「この子の栄養基準を満たすように設計されたものを、ちゃんと選んで与えてる」と思えるようになった。


「ラベル」より「中身」、「対立」より「理解」

カフェに来てくれる飼い主さんで、「ドライフードってよくないんですか?」と聞いてくる方には、最近こうお伝えしています。

「人間の超加工食品とは、目的も作り方も違うみたいですよ。ラベルだけじゃなく、原材料表と栄養素を見て、その子の体に合ってるか判断するのがいいみたいです」

驚かれることが多いです。 「えっそうなんですか、ドライフード全否定の話ばっか聞いてました」と。

私もずっと「ドライフード=悪」のSNS情報に流されかけていたから、その表情がよくわかります。

ペットフード業界も、まだ「加工レベル」を客観的に分類する基準を確立する途中。 私たち飼い主は、その途中の中で、自分なりの判断軸を持っていくしかない。

でも、その判断軸が「ラベルの言葉」じゃなくて「中身の事実」になれば、わんにょむのためのフード選びは、たぶん少しずつ深くなっていける。

明日も、わんにょむは普通にドライフードを食べると思います。 私は、その袋の裏側を、これまでより丁寧な目で読みたい。

ジャンクフード」と決めつけて変えるんじゃなくて、「この子に合うフード」を選び続ける。 それが、たぶん私にできる、いちばん大事な役割だと、今は思っています。