「老犬の認知症」って、私の中では「12歳とか14歳になってからの話」でした。
ある研究を読んで、その始まりが思っていたよりずっと早いと知った日のことを書きます。
カフェの常連さんが、ぽつりと話してくれたこと
ある日、シニアの愛犬を連れた常連さんが、こう話してくれました。
「うちの子、最近、夜中に起きて家の中をぐるぐる回るんですよ。 あと、たまに自分のトイレの場所がわからなくなってるみたいで」
その方の愛犬は12歳。 獣医さんに相談したら、「認知機能障害症候群(CDS)かもしれませんね」と言われたそうです。
その帰り、ふと、わんにょむのことを考えました。 うちの子はまだ5歳。元気いっぱいで、お腹も空いてれば吠えるし、散歩は大好き。 「認知症」なんて、ぜんぜん他人事だと思っていたんです。
「うちの子は、まだまだ若いから大丈夫」と思いながら、なんとなく、その「まだまだ若い」がいつまでなんだろう、と疑問が頭をかすめました。
8歳?10歳?12歳? 脳の老化って、いつから気にすればいいんだろう。
その夜、検索バーに「犬 認知症 始まる 年齢」と打ち込みました。
「8歳までに14〜35%」という、思っていたより早い数字
たどり着いたのは、2025年に出た、犬と猫の認知機能を扱った系統的レビューでした。
読み始めて、すぐにこの一文に出会いました。
犬の認知機能障害症候群(CDS)の有病率は加齢とともに増加し、6歳から始まる可能性がある。 8歳までに、犬の14〜35%が影響を受ける。
え、と思わず画面の前で固まりました。
8歳って、私の感覚では「まだまだ元気な大人」のイメージ。 14歳、15歳になってから出てくるものだと思っていました。
しかも、有病率14〜35%って、結構な数字です。 3頭に1頭が、8歳までに認知機能の変化を経験している可能性がある。
うちのわんにょむは5歳。 ということは、あと3年で、その「変化が始まる年齢」に入る。
しばらく動けませんでした。
「DISHAA」という、6つのサイン
研究には、認知機能障害症候群のサインが、6つにまとめられていました。 頭文字で「DISHAA(ディシャア)」と呼ばれているそうです。
- Disorientation(方向感覚の喪失):家の中で迷う、見慣れた場所で立ち尽くす
- Interactions altered(社会的相互作用の変化):飼い主や他の犬への反応が変わる
- Sleep–wake cycles changed(睡眠覚醒サイクルの変化):夜中に起きる、昼に寝る
- Housetraining lost(トイレ失敗):トイレの場所がわからなくなる
- Activity altered(活動レベル変化):散歩が減る、または無目的にうろうろする
- Anxiety increased(不安の増加):留守番が苦手になる、些細なことで怖がる
あの常連さんの愛犬が見せていた「夜中にぐるぐる回る」「トイレの場所がわからない」も、ここに入っていました。 「年だから」で片付けがちな症状の多くが、実は認知機能の変化のサインだったんです。
そして、研究にはこうも書かれていました。
CDSは老化に伴う脳の変化が原因。 脳の萎縮、ニューロンの選択的喪失、ベータアミロイド斑(アルツハイマー病と似た特徴)、酸化ストレスによる脳の損傷などが関係している。
これは、人間のアルツハイマー病と似ている、と。 犬も猫も、脳の中で同じような変化が起きていく。
しかも、その変化が6歳から始まる可能性がある。
食事で「予防」できるかもしれない、というデータ
ここまで読んで、ちょっと重くなりかけた気持ちに、続きの章でほっとしました。
研究では、30の臨床試験を分析した結果、いくつかの栄養素が認知機能の維持に効果があることが示されていたんです。
**オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)**は、特に高用量で、犬の老犬の認知機能に有意な改善を示した。
具体的には、DHA 33〜67.5 mg/kg、EPA 27〜43 mg/kg あたりで効果が報告されていました。 うちのわんにょむが体重4.5kgだとすると、DHAで約150〜300mg、EPAで約120〜200mgくらい。
しかも、複数の研究で示されていたのは、
- DHAは脳の細胞膜に豊富にある成分で、神経保護効果がある
- 単独でも効果あり、抗酸化物質(ビタミンE・C)と組み合わせるとさらに効果的
- MCT(中鎖トリグリセリド)も、エネルギー源として有効
つまり、まだ若い今のうちから少しずつ脳に良い栄養素を意識した食事にしていくことで、将来の認知機能の維持につながる可能性がある。
——「老犬になってから何かをする」じゃなくて、「若いうちから少しずつ準備しておく」が、たぶん大事だったんです。
わんにょむのフードの裏側を、もう一度確認してみた
その夜、わんにょむのフードの袋を持ってきて、原材料表をもう一度確認しました。
「魚油」「サーモンオイル」「亜麻仁油」など、オメガ3を示す原材料が入っているかどうか。 入っていれば、含有量がどれくらいか。
わんにょむのフードには、サーモンオイルが少量入っていました。 でも、研究で示されていた「効果が出る用量」を満たしているかは、計算してみないとわからない。
「今のフードでオメガ3が足りていなければ、いつか少量の魚油サプリを足すことも考えたい」と思いました。
これまで「サプリは必要ない」と思っていたんです。 でも、6歳から脳の変化が始まる可能性があると知ったあとは、考え方が少し変わりました。 「不調が出てから」じゃなくて、「不調が出る前に」が、たぶん意味がある。
すぐにサプリを買いに走ったわけじゃありません。 でも、わんにょむが6歳、7歳、8歳と進んでいく中で、私が今のうちにできる小さな準備を、ひとつずつ揃えていきたいな、と思いました。
「今のままでいい」の前に、見ておきたい未来
カフェの常連さんに、後日この話を伝えました。
「夜中の徘徊って、認知機能の変化のサインみたいです。獣医さんに相談されてよかったですね」と。
その方は、ちょっとほっとした顔で、「年だからって片付けなくてよかったって、改めて思いました」と。
そして、こう続けてくれたんです。 「あなたのところのわんにょむは、まだ若いから、今から少しずつ気をつけてあげられるね。羨ましいくらいよ」
その言葉が、ぐっと胸に入りました。
「老犬になってから慌てる」じゃなくて、「若いうちから整える」。 それが、わんにょむのために私ができる、いちばん早い一手だ。
明日も、わんにょむのフードの量と中身を、いつも以上に丁寧に確認しようと思います。 6歳になるまで、まだ少し時間がある。 その時間のなかで、できる準備を、ひとつずつ整えていきたいと、今は思っています。