「うちの子、見た目は元気だから、健診って必要ですか?」
カフェの常連さんが、シニアの愛犬を撫でながらそう聞いてくれた朝がありました。
ある研究を読んで、その「見た目は元気」が、見えない病気を隠していることがあると知った日の話を書きます。
12歳のラブラドルを連れた常連さんとの会話
その方の愛犬は12歳のラブラドル。 散歩も普通に行けるし、ごはんも食べるし、トイレも問題ない。 「見た目は若い時とほとんど変わらない」と、ちょっと誇らしげに話してくれました。
「健診は1年に1回行ってるんですけど、いつも何も問題ないって言われて。 本当に必要なのかなぁって、最近思って」
私はうなずきながら、(うちのわんにょむもまだ5歳だけど、毎年の健診ってちゃんとしてあげなきゃね)と思いました。
シニアになると、健康保険のない動物医療の費用も気になる。 「見た目は元気」なら、健診の頻度を減らしてもいいのか、それとも逆に増やすべきなのか。 判断の根拠を、私は持っていませんでした。
その夜、検索バーに「シニア犬 健診 必要 研究 異常」と打ち込みました。
「見た目は健康」のシニア犬で、何が見つかったか
たどり着いたのは、ある研究の話でした。
研究者たちは、「見た目は健康そう」と判断されたシニア・老犬を集めて、丁寧な身体検査と血液検査をしてみました。
そして、こう書かれていました。
身体的・検査値の異常は、見た目が健康そうな高齢犬でもよく見つかる。 獣医師は、これらの異常の発見と管理を通じて、高齢動物の健康管理を向上させる重要な役割を果たす。
つまり、「見た目は元気」が、実は見えない異常を隠していることが、シニア犬では多い。
これは、知っていたようで、ちゃんとは認識していなかった事実でした。
人間でも、定期健診で「症状はないけど、血液検査で見つかった」とよく聞きます。 犬の場合、症状を言葉で伝えられないから、なおさら潜在的な異常が見つかるかどうかは健診次第。
「見た目は元気」が、なぜ油断につながるか
シニアの愛犬が「見た目は元気」だと、飼い主としては、こう思いがちです。
- 「ご飯食べてるから大丈夫」
- 「散歩行けてるから問題ない」
- 「トイレもできてるし」
- 「特に困ったことないから、健診はいいかな」
私もたぶん、わんにょむがシニアになったら、同じように考えるかもしれない。
でも、研究が示していたのは、その「見た目」の裏側で、すでに何かが始まっていることがある、という事実。
例えば、
- 腎機能の低下(症状が出るのは末期)
- 心臓の弁の変性(聴診で初めて分かる)
- 肝臓の数値異常(血液検査で見える)
- 糖代謝の異常(早期は無症状)
- ホルモン異常(甲状腺、副腎、膵臓)
これらは、初期段階では犬本人が「いつも通り」に見えても、体の中で静かに進行している。 早めに見つかれば、治療や食事の調整で進行を遅らせられるものも多い。
——「見た目は元気」を信じきって健診を減らすのは、たぶん損をしている。
あの常連さんに、後日この話を伝えた
数日後、あの常連さんがまたカフェに来てくれました。
私は、「先日のお話、ずっと考えていて」と切り出しました。
「シニア犬って、見た目元気でも、血液検査とかで隠れた異常が見つかるって研究があるみたいで。 早く見つかれば、治療で進行遅らせられるものも多いみたいです」
「うちの場合、12歳のシニアだから、もしかしたら年2回くらいの健診のほうが安心かも」とも。
その方は、しばらく考えてから、「そうかもしれないですね。あの子、本当はもう少しちゃんと診てもらったほうがいいのかな」と。
数週間後、その方から教えてもらいました。 半年に1回の健診ペースに変えて、最初の血液検査で腎機能の軽い低下が見つかった、と。
「症状は全然なかったから、本当にびっくりしました。 でも、早く分かったから、お薬と食事で進行をゆっくりにできるって言われて。 あの時聞いてよかったです」
その方の表情を見ながら、私はちょっと胸が熱くなりました。
「見た目は元気」だけを信じていたら、たぶん腎機能の低下に気づくのは、もっとずっと後だった。 気づいた頃には、もう進行していて、できることが限られていたかもしれない。
「症状が出てから」じゃなく、「症状が出る前に」が大事だった
カフェに来てくれるシニア犬の飼い主さんで、「健診って毎年でいいですか」と聞かれることが、よくあります。
最近はこうお伝えしています。
「シニアになったら、年2回くらいの健診のほうがいいみたいですよ。見た目元気でも隠れた異常が見つかることがある、って研究にも出てるみたいで」
驚かれることが多いです。 「えっそうなんですか、年1回で十分かと」と。
私もずっと「症状が出てから」のスタンスだったから、その表情がよくわかります。
うちのわんにょむは5歳。 人間でいうと、まだ成人〜中年くらい。 でも、いつか「シニア」と呼ばれる日が来る。 その時に「症状が出てから」じゃなくて、「症状が出る前に」のスタンスで健診を計画してあげたい。
そして、今のうちから、わんにょむのベースの血液検査の数値を覚えておくつもりです。 これから先、その数値からどう変化していくかを追えれば、シニアになった時の「異常」が、もっと早く見えるようになる。
明日も、わんにょむのいつもの様子を見ながら、(この子の今は、ちゃんと記録しておこう)と思います。
「見た目は元気」を信じることと、「見た目の裏側を確認する」ことは、両方できる。 それが、たぶんシニアまで一緒に歩く飼い主に、いちばん必要な視点だと、今は思っています。