「なんか最近、うちの子の性格が変わった気が」
カフェの常連さんが、心配そうにそう話してくれました。
ある研究を読んで、その「性格の変化」が、実は痛みの早期サインかもしれないと知った日の話を書きます。
「ちょっと変わった気がする」を、年のせいで片付けていた
その方の愛犬は、9歳のシバ犬。
「前まではドアの音にすぐ反応してたのに、最近はちょっと遅い」 「散歩で他の犬と遊ぶの好きだったのに、最近は避けるみたいで」 「玩具にも、あんまり興味示さなくなった」
「年だから、性格がちょっと丸くなったのかな」と、その方は笑いました。
私もうなずきながら、(うん、シニアになるとそういうこともあるよね)と思っていた。 うちのわんにょむもまだ5歳だけど、いつかこういう「性格の変化」が来るんだろう。
でも、家に帰ってから、なんとなく気になっていました。
「性格が変わった」って言葉、便利だけど、それで片付けて本当の原因を見逃していないか。
特に、シニアの犬で起きる行動の変化は、たぶん「性格」じゃなくて「体の中で何かが起きてるサイン」かもしれない。
その夜、検索バーに「犬 性格変化 シニア 痛み 行動 研究」と打ち込みました。
「行動変化が、身体症状より先に出る」と書かれた研究
たどり着いたのは、2024年に出た、犬の慢性疼痛と行動の関係を調べた研究でした。
研究者たちは、慢性的な筋骨格系の痛みを持つ46頭の犬と、健康な143頭の犬を比較しました。
典型的な筋骨格系疾患のサイン(歩行変化、こわばり、跛行)が現れる前に、行動変化が先に出ることがある。 これらには、恐怖反応の増加、ストレスからの回復時間の延長、社交性の低下、おもちゃや遊びへの興味の減少が含まれる。
え、と読み直しました。
つまり、犬の慢性的な痛みは、「足を引きずる」「歩き方がおかしい」みたいなはっきりした症状より前に、行動の変化として現れることが多い。
具体的な「予測サイン」として、研究では以下が挙げられていました:
- 怖がる頻度の増加(音、人、状況)
- ストレスから普段の状態に戻るまでの時間が長くなる
- エンリッチメント(遊び、おもちゃ、散歩)への興味の低下
- 社交的な相互作用の質の低下(人や他の犬への接し方)
——あの常連さんの愛犬の話、ぜんぶ当てはまっていました。
「ドアの音に反応が遅い」「他の犬と遊ばなくなった」「玩具に興味がない」。 これらは、「性格が変わった」じゃなくて、たぶん「体のどこかが痛い」のサインだった。
しかも、研究では、犬の飼い主は動きベースの変化(歩き方、走り方)には気づきやすいが、こういった行動・感情ベースの変化には気づきにくい、と書かれていた。 私たちは「足を引きずる」になって初めて「痛みかも」と思うけど、実はその前から、性格や行動に小さな変化が現れている。
常連さんに、後日この話を伝えた
数日後、あの常連さんがまた来てくれました。
私は、慎重に話を切り出しました。
「先日のシバちゃんのお話、ずっと考えていたんです。 研究で、犬の慢性的な痛みって、歩き方の変化より性格や行動の変化が先に出ることがあるって書いてあって」
「もしかしたら、シバちゃんの『反応が遅い』『社交的じゃなくなった』っていうのも、関節とか、どこかが痛んでるサインかも」
その方は、目を見開いて、しばらく考え込みました。
「うちの子、今までそんなに反応薄かったことなかったから…… 獣医さんで聞いてみます」
数週間後、その方から教えてもらいました。 シバちゃんは、初期の関節炎と診断されて、痛み止めとサプリで治療を始めた、と。
「お薬始めて1週間くらいで、ドアの音にすぐ反応するようになって、おもちゃも引っ張りに来るようになって。 やっぱり痛かったんだと思います」
その方は、ちょっと涙ぐみながら、「もっと早く気づいてあげればよかった」と。
私は「いやいや、性格の変化って気づきにくいから、誰でもそうなりますよ」と。 でも、本当は、私自身もそう思っていました。
「性格」というラベルで片付けていたかもしれない自分への、ちょっとした反省も込めて。
「変わった」を、「サイン」として読み替える目を持ちたい
カフェに来てくれる飼い主さんで、「最近うちの子が」と話す方には、最近こうお伝えしています。
「性格や行動の変化って、痛みのサインかもしれないんですよ。歩き方が変わる前に、性格が先に変わることがあるみたいで」
驚かれることが多いです。 「えっそうなんですか、年のせいだと思ってました」と。
私もずっとそう思ってきたから、その表情がよくわかります。
うちのわんにょむはまだ5歳。 でも、いつかこの子の「性格」が変わったように見える日が来たら—— 私は「年だから」で片付けないで、まず体のサインかもしれないと考えたい。
恐怖反応の増加、ストレス耐性の低下、遊びへの興味の減少、社交性の低下。 これらは、犬が「痛いよ」と性格を通して伝えている声かもしれない。
明日も、わんにょむの行動を見ています。 変化があったら、すぐに「気のせい」と片付けないで、まず体のことを考える。 それが、痛みを早く見つけて、わんにょむのQOL(生活の質)を守るための、いちばん大事な視点だと、今は思っています。